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冴えない彼女の育てかた♭ 第4話「二泊三日の新ルート」感想・考察 霞ヶ丘詩羽の物語ってなんだろう

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

前回の感想はこちら。

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【caution!】感想・考察記事です。ネタバレが含まれます。なお本記事はアニメ準拠につき、アニメより先の原作部分のネタバレはしない方向です。筆者のミスにより悪意無きネタバレが発生してしまう可能性もあります。ご容赦ください。

おまたせしました詩羽先輩のクライマックス回。

はじめに、霞ヶ丘詩羽の物語

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©2017 丸戸史明深崎暮人KADOKAWA ファンタジア文庫刊/冴えない♭な製作委員会

――まず感想――

いや、とてもよかったです。原作からかなり削って、面白さを損なうことなく20分に収めたことは凄いです。上手くコミカルとシリアスを配慮しながら(原作よりだいぶ明るく見えた)多くの人に届くようにできている。満足でした。

この第4話をもって、原作5巻のエピソードが終了しました。

詩羽先輩のヒロイン巻。彼女のエピソードが語られる。それつまり霞ヶ丘詩羽の物語です。何が言いたいのかというと、「物語は続いている 」こと。原作2巻。アニメでは3~6話のこと。この文脈を意識して、語っていこうと思います。


結論をはじめに。

  • 霞ヶ丘詩羽の物語とは、夢見る乙女詩羽の"恋物語"である。

  • そして二つ目のシナリオは、倫也への2度目の告白だった。


二つのシナリオの意味

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

  1. 巡璃ルート:瑠璃以外は幸せになる。

  2. 瑠璃ルート:瑠璃と主人公だけの小さな幸せ。

相反するシナリオをなぜ作ったのか。ヒロインのモデルとなった人物について考えるとよくわかる。

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

このエピソードを象徴する場面。ただ加藤一人だけが二つのシナリオに込められた意味に気づき、詩羽の本心を聞くことになる。

加藤恵巡璃ではなく、瑠璃をメインヒロインに選んでほしい。ゲーム制作にかこつけた詩羽のエゴがその正体だった。仮に瑠璃がメインヒロインに選ばれても、霞ヶ丘詩羽安芸倫也の恋人になれるとは限らない――その可能性はとても低い――はずです。

なぜ詩羽はエゴイスティックな行動を起こしたのか。プロのクリエイターである彼女が、私情を挟むのは同人活動だからではない。私情の成れの果てがクリエイター霞詩子だからです。

その私情=モチベーションの話になっていきます。

詩羽のモチベーション その答え

第1話を思い出してください。このブログでも触れた。詩羽先輩のモチベーションの話。

つまるところ、詩羽のモチベーションに英梨々は気づかなかった。そしてそのモチベーションこそが、この後の展開へと繋がっていくのだ。だからまだ言えない。その時が来たら記事に書くことになる。

冴えない彼女の育てかた♭ 第1話「冴えない竜虎の相見えかた」感想・考察 英梨々と詩羽の出会いがここに - アニメの歩きかた

英梨々のモチベーションが復讐であるならば、詩羽のモチベーションはなんだろうか、その問いこそ、霞ヶ丘詩羽の物語を考えるに必要なもの。 “「恋するメトロノーム」をなぜ書いたのか"につながる。

倫也の、"桜舞い散る坂で、加藤恵との運命の出会い"のように*1、創作意欲を突き動かす原動力はなんだろう。それは原作にきっちり書いてあった。しかもアニメでは改変されている部分。ちょっと原作に触れます。

『つまりね、詩ちゃん……霞詩子が当たったのは、彼女が夢見る乙女だったからなのよ』
『なんかあの人を表現するのにもっとも似合わない単語が出てきたような気がするんですが』
『本当の恋をしらない、そしてすごく憧れてる。そんな自分が大嫌いな、コンプレックスの塊みたいな女の子』
『え……』
『優等生だからこそストレスが溜まり、頭がいいからこそ、それを妄想で解消してた』
――冴えない彼女の育てかたFD 第2.5話「眠たい彼女のあやしかた」

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冴えない彼女の育てかた #4 予算と納期と新展開

一期の4話。「予算と納期と新展開」で、霞詩子に倫也が人気ブロガーTAKIとしてインタビューするところ。担当編集の町田さんと倫也のこんな会話が原作ではあった。

霞ヶ丘詩羽は恋を夢見る乙女で、妄想を小説にしたらラノベ作家になっていた。「恋するメトロノーム」はそんな純情な乙女が紡いだ物語だった。という解釈ができる。

詩羽のモチベーションは「恋への憧れ」となる。恋メト1巻の時点では……。

倫也と出会って、恋をする

恋への憧れだけでは詩羽のモチベーションの説明にはなりません。恋メトを書いたことで、安芸倫也と出会い、彼に恋をしたから。

恋メトは恋への憧れから、倫也へ向けた恋物語に、根本の動機が変わっていく。そうして最終巻の5巻になり、作品を通して倫也に告白する。

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冴えないヒロインの育てかた #6 二人の夜の選択肢

「あなたが求めていたものかどうか知りたいの。この結末が、主人公の決断が、ヒロイン達の未来が」
「だからどうして」
「それによっては結末が、変わるかもしれないから」
「そんな自信の無いこと言わないでよ」
「それでも私は意見が聞きたいの、あなたの気持ちが知りたいの」
――冴えない彼女の育てかた #6 二人の夜の選択肢

この結末=沙由佳end。詩羽の分身である彼女が、主人公倫也に選ばれる物語。

ご存知の通り倫也はあくまでファンとして、遠回しな告白に気付くことなく、詩羽を拒絶したのだった。ゆえに「恋するメトロノーム」は2巻から登場したヒロインと結ばれる結末になってしまった。

「恋への憧れ」→「倫也への恋」これが彼女のモチベーションというまとめになります。

再結論 

以上を踏まえてみたら、はじめの結論が良くわかると思います。

だから卒業が迫った彼女は、倫也との縁が切れないうちに、最後の行動に出たのです。

  • そして二つ目のシナリオは、倫也への2度目の告白だった。

このエピソードは霞ヶ丘詩羽のリベンジでした。瑠璃詩羽主人公倫也に選ばれるかの。そして"否定"されました。きっぱりと主人公に「だってこれは俺の作りたかったゲームじゃない」と初めて断られた。だから涙を流した。

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

以上が霞ヶ丘詩羽の物語、その解釈。

夢見る乙女の恋物語は決着がついた。ここからが霞ヶ丘詩羽の新しい物語の始まりです。

まだまだこれから。

だからクソゲーになった

クソゲーだよ、これ。

霞ヶ丘詩羽の情念がたっぷり盛り込まれ、それを巧妙に隠した"私小説"だったから。文字だけで人を感動させてきた。小説というメディアですから。

霞詩子はシナリオライターとして通用しなかった。彼は見抜いていた。

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冴えない彼女の育てかた♭ #3 初稿と二稿と大長考

「逆に僕はシナリオだけは、負ける気がしないんだけどな」
(中略)
「倫也君も言ったじゃないか、ゲームってのは総合芸術なんだよ」
――#3 波島伊織

小説ではなく、ゲームシナリオ。文字だけで表現される文芸ではなく、文字・絵・音・演出を使った総合芸術だと、波島伊織があれだけ強調して警告していましたね。

詩羽のエゴが色濃く出た物語は、もうそれで完結している。

それぞれの素材の味を生かす、ゲームとしてのバランスを取ることを彼女は知らなかった。まだこれからが期待される新進のライトノベル作家だから。実はまだまだクリエイターとしては未熟なこと。

霞ヶ丘詩羽の脆さや未熟さなど、今まで築き上げてきた"できる先輩像"がぼろぼろと崩れていきます。彼女が新しく前に進むために、必要なこと。そういった回です。

倫也はクリエイターに

冴えない彼女の育てかた」として、原作5巻という内容は一つのターニングポイントになりますと、2話の記事で述べました。その最たるものが、主人公です。

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

詩羽が出した選択肢に、彼は再び選ばなかった。でも答えを出した。この選択こそが、冴えカノのターニングポイントです。

理想のハーレム作品 

ちょっとマクロな視点に移ります。

理想のハーレム作品の結末は、みんな不幸がなく、ヒロインそれぞれの問題を解決できたのか?だと思っています。ヒロインはみんな物語上、存在する理由があり欠点や問題を抱えている。主人公と結ばれないヒロインは、主人公との出会いのおかげで、恋愛面以外の幸せ(状況の好転)を得るのが、理想だと考えている。

それこそが憂いのないスーパーハッピーエンド(表面的にはハッピーだけど、本質的にはちょっぴりビター。表裏一体だと僕の好みです)そのもの。

彼の選択はその宣言をしています。

冴えない彼女の育てかた」というハーレムものがこれから先、どう描かれていくかのメタ構造的な宣言だと解釈できる。

この作品の稀有な部分で面白い。

倫也と伊織 二人のP 

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冴えない彼女の育てかた♭ #3 初稿と二稿と大長考

前話になぜ波島伊織が出てきたのかというと、安芸倫也とのポジションの違いをびっしり提示するため。

そもそも倫也はプロデューサーに向いていない。根っからのクリエイタータイプであることを、最初に述べておきます。

伊織がいるおかげで、倫也がクリエイターになることへの説得力と納得力の両方が生み出される。

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冴えない彼女の育てかた♭ #3 初稿と二稿と大長考

オタクの世界で上り詰めたい、業界を牛耳る存在になりたい。野心家で"売れる売れないを見抜く"商業的な目を持っている。クリエイターとは一つ線を引いた立ち位置をする。参謀だったり、宰相のようなタイプ。

でも人望は薄い。野心家の仮面を外せば、友達想いで妹想い、いい人なんですけどね。

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冴えない彼女の育てかた♭ #3 初稿と二稿と大長考

ぼくのかんがえたさいきょうのゲームを作りたい。熱意と行動力、その人脈が武器のクソオタク。べつに秀でた技能があるわけでもなく、 空回りばかりしている。

プロデューサーとして一歩引いた視点はなく、一人のオタクとしてクリエイターに寄り添い、自分が面白いと思えるものを作らせる。王様だったり、社長のようなタイプ。誰か支えてくれる人がいないとダメ。

ただ人望が厚く、人たらしな面があるのがさすが主人公。

こうして比べても、やはりプロデューサーというより、クリエイターな倫也。アニメが3期4期と続けば、この二人の掛け合いが増えるんですけどね。

新しい二人へ T-AKI UTAKO

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

互いに大きな契機となったこの回。

倫也は自分の理想を、自分の力で形にするクリエイターに。

詩羽は恋ばかりに縛られない、自分の殻を破りゲームシナリオライターに。

その記念碑のようなもので、TAKI UTAKOの共同ペンネームにする。ここから詩羽にあった、もどかしい空気はなくなり楽しいゲーム作りの時間がやってきましたね。

別に恋愛脳ばかりじゃない詩羽先輩。一皮むけたクリエイターの姿で、自分の手を離れた(詩羽のエゴから離れた)キャラクターとその物語を認める。

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

作家とファン。先輩と後輩。シナリオライターとプロデューサー。そしてクリエイターとクリエイターという複雑な詩羽と倫也の関係に、ぐっと来ました。

終わりに、冴えてる彼女

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冴えない彼女の育てかた♭ #4 二泊三日の新ルート

最後を持っていくのはメインヒロインの仕事。そしておめでとう。この回をもって、ロングヘア―加藤が解禁された。

詩羽の願いを見抜いた加藤は、選ばれなかった瑠璃=沙由佳の成仏を引き受ける。これは詩羽の決着であり、その大役をあの加藤がになっている。

瑠璃で沙由佳で詩羽な彼女。声と演出が付くとこんなに魅力的に見えるんだなと、アニメで良かった。

第二期はずっと冴えてる彼女です。冴えない瞬間が一度もなく、もやはタイトルに意味がなくなっている。メインヒロインここに極まれり。最高でした。

さて、次回から原作6巻のエピソードへ。英梨々のヒロイン回です。

*1:実は半分正しい。12巻の感想記事で述べた僕の考えがある。冴えカノダブルヒロイン論 倫也はちゃんと恋がしたかった。を参照のこと。 www.animewalk.site